AIが働き方改革を加速する―
「第3回AI・人工知能EXPO」潜入レポート

AI・人工知能といえば、ソフトバンクのPepperのような感情認識ロボットやビッグデータを活用した業務
システムというイメージを持たれる方も多いかもしれない。
ところが現在では多種多様なソリューションサービスが開発され、あらゆる業界で実用化されるまでに至っている。
そんなAI・人工知能サービスを一堂に集めたイベントが「AI・人工知能EXPO」だ。3日間の開催期間中に5万人もの来場者を集めた一大イベントで、近未来の世界を体感してきた。


250社が出展する「AI・人工知能EXPO

AI・人工知能EXPOは、画像や音声認識、チャットボット、ディープラーニングなどの最新技術が集う
専門展だ。
2019年で3回目となる今年は、東京ビッグサイト青海展示棟で4月3日から5日にかけて開催された。

出展企業は250社。NTTやKDDI、富士通などの大手企業をはじめ、ベンチャー系の企業や大学・研究機関
なども多数参加している。

各ブースの前には多くの見物客が並び、展示品の閲覧や担当者から 話を聞くなどしていた。

今回のAI・人工知能EXPOは「働き方改革」を推進する業務ソリューションが目立った。
例えば、AIプラットフォームを提供する株式会社シナモンのブースでは、AI文書読取エンジン「Flax Scanner(フラックス・スキャナー)」を展示していた。

これは、契約書や請求書などの文書を自動で整理してくれたり、音声認識技術を活用し会議内容を議事録にまとめたりするAIソリューションだ。すでに50社以上の企業で実用化されており、業務改善に大きく寄与しているという。

また、ITソリューション企業の株式会社図研プリサイトでは、独自開発の重要語句抽出AIによる「フルオート型ナレッジ活用ソリューション」を披露。企画書などのドキュメントを作成中に、以前作成した類似資料を自動で提示してくれるというシステムだ。

作成中のドキュメント内に使われているキーワードから、関連度の高い資料をAIが自動検出するというもので、企業内の情報活用や業務効率アップにつながり働き方改革にも寄与してくれそうだ。

図研プリサイトのブースで「重要語句抽出AI」を説明する担当者。

こうした営業・事務などデスクワーク系の業務効率化を推進するツール以外にも、画像認識やディープラーニングを活用し、働き方改革をサポートするソリューションも登場している。

日立グループでは、製造業の品質検査をAIが対応する「ディープラーニング目視検査代替サービス」を展示。製品出荷前の不良品チェックには熟練の技が必要とされるが、AIに検査員の着眼点を学習させることで品質検査業務の自動化を実現できるそうだ。検知率は95%以上で、人間が行うのと同等あるいはそれ以上だという。

ディープラーニング目視検査代替サービスの管理画面。

このほかにも、機器の故障や品質低下など事前に予測し効率的なメンテナンス時期を教えてくれる「状態予測エンジン」も展示されていた。

これらの技術を用いて、パソコンやスマートフォンの修理業者でも活用されるソリューションは開発できないだろうか。
担当者に尋ねてみると、「現状では、見た目でわかる範囲であれば可能」とのこと(日立製作所担当者)。見た目以外もディープラーニング等の技術で確認できるようになれば、修理業界にもAIが活躍する時代が来るかもしれない。


手不足にもAIが寄与 

小売業に特化したシステムを提供する株式会社ヴィンクスでは、AIを使った無人店舗「VINX STORE(ヴィンクスストア)」を実演していた。

無人店舗のリスクといえば、万引き対策だ。そこで、防犯カメラに映った人の「目の動き」や「不自然な行動」を画像認識とディープラーニングでチェック。不審者は管理画面上に赤枠で表示されるほか、店舗のスマートスピーカーで「お探しのものは何ですか」と自動音声で呼びかけるなど万引き抑止につながるという。人手不足が深刻なコンビニ業界にとって改善策の一手になりそうだ。

VINX STOREの管理画面。不審者を認知すると黄色や赤の枠で表示され、管理者に伝えてくれる。

企業だけでなく、大学などの研究機関の出展も紹介しよう。
公立はこだて未来大学では、デマンド交通の配車システム「SAVS(サブス)」を展示していた。

これは、さまざまなデータから次の利用者のピックアップや目的地までの所要時間短縮など、効率的な配車ができるというシステム。これだけなら、すでに多くのタクシー業界で導入されているが、SAVSはタクシーに限らず路線バスやスクールバスといったあらゆる交通機関とクラウドで連携させ活用できないかと模索している。

近年、地方ではバスなどの公共交通機関でも乗務員の人材確保が厳しく、運転手がいないため路線の縮小や廃止せざるを得ないといった事業者も増えている。こうした地域でSAVSを使い、スクールバスや病院の送迎バス、あるいはUBERのような事業者も参加することで、交通弱者の移動を確保できるようになると期待されている。

今回の展示会を見て感じたのは、AI・人工知能を活用したソリューションはすでに身近な存在になっているということ。
そして、働き方改革や人手不足といった現在の日本企業が抱える課題に、業種や業界を問わず解決できるだろうといった期待感だ。

AI・人工知能が、ますます多くの現場で活用されるようになるには技術発展も重要だろう。そのカギを握るのが「ディープラーニング」という技術である。

次回は、このディープラーニングについて国内の第一人者である松尾豊氏が、現状と今後の展望について語っている講演の様子を紹介しよう。

 

>>(次号)企業はAIを活かせるか? ディープラーニング活用の展望を探る

 

大五康彦(だいご やすひこ)
こんにちは、会報誌『ADJUSTER』では「技術検証」シリーズや会員様取材などを担当していました。テレビ番組の制作会社でリサーチおよび構成、Webライティングを経てフリーランスのライターとして独立。IT系や不動産、金融系の取材執筆でWeb媒体を中心に活動しています。そのほか企業・団体のWebサイトにおける企画立案や構成などWebディレクター兼ライターとして500社以上のホームページ制作にも携わっています。よろしくお願いします。

 

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