AIがテープ起こしと記事の要約を代替。ライターの仕事はなくなってしまうのか?

が普及すると、自分は仕事を奪われてしまうのではないか――そんな心配を抱いている人は少なくないと思いますが、実際はどうなのでしょうか ??

が「」を配信

AIは人間の生活に勢いよく進出し、仕事を代替するようにもなってきました。筆者の仕事である業務も例外ではありません。2017年、日本経済新聞は上場企業およそ3600社の「決算サマリー」をAIで文章化し配信するサービスを開始。また広告代理店・電通は広告コピー生成システム「AICO(アイコ)」のβ版を静岡大学と共同開発しました。

さらに同年10月、徳島県が電子書籍取次大手のメディアドゥと共同で、知事の定例記者会見をAIで要約し発表するサービスの実証実験を開始。しかも、知事会見での件は、音声認識AIによってほぼ自動で書き起こされるとのことです。技術提供したのは、メディアドゥが出資する、自然言語処理AIの開発を手掛けるエーアイスクエア。文字起こしの精度は高く、人が少し手を加えるだけで完全な原稿ができてしまうのだそうです。

こうなると、記者やライターは仕事をほとんどやらなくていいことになってしまいます。“AIに仕事を奪われる時代”が、冗談ではなく目前まで迫ってきているのかもしれません。

徳島県の「AI要約サービス」は県の公式サイト内に専用ページが設けられており、誰でもサービスを体験することができます。私はさっそく、AIの実がどれほどのものなのかと好奇心を発揮し、このサービスを利用してみました。

スピードは速いが、精度はまだ低い

自動文字起こしと要約の対象になっているのは、知事定例記者会見と県審議会等会議録。記者会見のほうをみると、今年3月19日の記者会見がふたつの話題に分けて掲載されています。またご丁寧に、会見の動画をノーカットで見られるYouTubeへのリンクも設けられている。文字起こしの精度もチェックできるようになっているわけですね。筆者は、記者会見の話題のひとつ、徳島阿波おどり空港と福岡空港を結ぶJALの飛行機を「2便化」した記事を見てみることにしました。

体験ページには文字起こしする前の「原文」が掲載されており、ユーザーが任意の「要約率(10~90%)」を指定できるようになっています。試しに50%に指定し、「要約開始」をクリック。すると、約1100字の原文が一秒足らずで527字に要約されました。

ライターは長い文章を短く「リライト」をすることがありますが、1000字を500字に縮めるとなると、慣れていても5分くらいはかかるでしょう。それがAIでは一秒もかからないのですから驚くべき速さです。

ところが要約の精度はどうかというと、ちょっと疑わしい。原文はいくつかの段落に分けられていますが、50%要約によって単に半分ほどが切り落とされただけになっています。しかも、残された段落は順番をバラバラにされて組み直されており、中盤で話されたことが最初に出てきたりしています。また「ハイライト」というタブをクリックすると、どの段落が切り落とされたかがわかるようになっていますが、要約後の記事だけを虚心に読むと誰もが要領を得ないでしょう。

ライターが要約すれば段落にこだわることなく要素を取捨選択し、主旨に沿って読みやすくつなぎ合わせますが、それは今のところAIにはできないようです。この程度なら、今すぐAIに仕事を奪われることはないかもしれません。

いかにAIを使うか

とはいえ要約の精度などは瞬く間にライターのレベルにまで引き上げられるでしょう。私の周囲のライターには、10年後には自分の仕事はAIに取って代わられてしまうと考えている人がけっこういます。

しかし、AIには人間のように「“問い”を立てること」ができません。を自ら考え、問題を発見し、それを追究していくのはまだ人間の仕事といえるでしょう。今後、私たちが考えなくてはならないのは、AIに仕事を奪われるかどうかではなく、むしろ自分の仕事のためにいかにAIを使うか、ということかもしれません。

 

澤村耕次(さわむら・こうじ)
映画製作、CMシナリオ制作、タウン誌の編集などに従事した後ライターで十数年の経験。現在も年間300本の取材、80万字の執筆をこなす。会社案内、広報誌、社内報、採用パンフ、社史などの媒体で執筆し、企画立案や編集も兼務。対応業種は、金融、不動産、建設、鉄道、小売などで、経営者インタビューから職場取材、社員取材まで幅広く手掛ける。また編集業務では作家や学者、証券アナリスト、料理研究家、コピーライターなどを担当。

 

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