小規模オフィス向きでも1~2ベイ型――秋葉原で売れているNASキットの傾向

需要はオフィスから個人用途まで活躍の場を広げている。普及の過程で売れ筋にも大きな変化が生じているようだ。秋葉原のPCパーツ街でNASキットのトレンドを調べてみた。

2台の大容量HDDでRAID 1/0を組む人が多い

最近は量販店でも様々な構成のNASが購入できるが、好みのNASキットとHDDを別個に購入して自ら組み立てる人も多い。秋葉原でNASキットを扱うPCパーツショップによると、購入目的は完全な趣味用からSOHO、5~10人程度の小規模オフィス、大学の研究室など多岐にわたるという。

プライベートからにおけるまで様々なデータの貯蔵庫として使われているわけだが、売れ筋は目的別にばらける様子はなく、むしろ一本のトレンドに収束している感がある。

パソコンSHOPアークのスタッフは「ここ1~2年は1ベイと2ベイタイプの売れ行きが好調です。法人さんでも4ベイや8ベイを探されている方は少なくなっている印象があります」と話していた。

法人需要の多いオリオスペックも「前は4ベイタイプも売れましたが、2ベイ中心になりましたね」という。理由は「HDDの容量が上がったから」。それまでのNAS向けHDDは2TBタイプが主流だったが、昨年から3~4TBタイプの容量単価が逆転して売れ筋となった。そこから売れるキットの様相が急に変わったそうだ。

秋葉原においてNAS向けHDDの定番といえばウェスタンデジタルの「WD Red(Pro)」だが、やはりどこのショップでも3~4TBモデルがよく売れているという。

価格表写真
パソコンSHOPアークの「WD red」価格表(2018年5月時点)

実際、1TBあたりの税込み単価でみると、2TBが5000円弱、3TBと4TBが3900円弱、6TBが4000円前後、8TBが3500円弱となっており、少なくとも2TBモデルに値頃感が薄いことがみてとれる。単価最安は8TBあたりになっているが、そこまでの大容量を求める人が少ないといった事情もあるようだ。

パソコンSHOPアークは「HDDの容量は最大12TBまで上がりましたが、扱うデータは正比例でリッチ化しているわけではないですからね。むしろ、の流行でデータはデータセンサーに集まって、個人や小規模オフィスにはそんなに落ちてこなくなっている。だから、当面は4TB×1~2台が定番になるんじゃないでしょうか」と話していた。

伴い、RAIDも1/0(ミラーリング、ストライピング)が当たり前となっており、4台以上の場合もRAOD 10(ミラーリング+ストライピング)が中心。かつて人気を集めたRAID 5/6は相談の俎上に載ることも減ったという話を方々で聞く。

街の売れ筋ナンバーワンは「DISKSTATION DS218J」

「DISKSTATION DS218J」
TSUKUMO eX.に並ぶSynology「DISKSTATION DS218J」

そうした動きを踏まえて、最近売れているNASキットを尋ねたところ、複数のショップが一番人気に挙げたのが、Synologyの「DISKSTATION DS218J」だった。GigabitLANで接続する2ベイタイプのキットで、拡張用にUSB 3.0端子を2基備える。取材時の税込み価格は2万2000円前後だ。

TSUKKUMO eX.は「元々個人ユーザー向けの定番シリーズです。信頼性の高いメーカーながら割安で、NASキットの入門機的な存在ですね。3~4TB HDDが主流になってきて、SOHOや法人向けの人気も伸びているように思います」という。

「TS-231P」
同じくQNAP「TS-231P」

対抗馬としては、QNAPの「TS-231P」が挙げられる。同じ2ベイタイプで、GigabitLANを2系統備える。USB 3.0端子は3基ある。取材時の税込み価格は2万6000円前後だった。

「QNAPの個人向けモデルで、やはり入門機的な売れ方をしています。ユーザーインターフェイスに定評があって、無償でクラウド機能などを追加できる点を気に入って購入する人も少なくないです」(同店)

ライトユース向けの定番機種が法人個人で共通しているのは、ユーザーとしてもメンテナンスする立場からしても楽かもしれない。

 古田雄介
 フリー記者/一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー理事
 デジタル遺品の現状を追う記者。著書に『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)などがある。2016年8月にデジタル遺品研究会ルクシーを共同設立して理事に就任。

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