一人ひとりの個性にあわせたトラブル対応で、仕事の効率化を図りたい

国内電機メーカー子会社勤務 園山佳貫氏

国内電機メーカーの子会社に勤務する園山佳貫さんは、パソコン整備士検定1級を3回目の挑戦で取得した。業務で経験したサーバー構成やトラブルシューティングなどの分野は問題なかったものの、業務で余り携わっていなかったネットワークの分野には苦労したという。

1級を取得するまでの学習方法や仕事での活かし方、そしてコロナ禍における仕事の変化など話を伺った。

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◆◇◆ SEにもクライアントPCの資格が必要だと感じていた ◆◇◆

園山さんがパソコン整備士検定のことを知ったのは、愛読していた雑誌の広告だった。会社から指導されたわけではなく自ら志願して受験し、3級と2級は同月内受験で一発合格。協会のホームページに掲載されている過去問をこなす程度でクリアできたが、1級はかなり難しかったと振り返る。

「データセンタのシステム設計や運用などの実務経験がありましたから、サーバー構成などの分野はそれほど苦労しませんでした。ただ、ネットワークは作業経験が少なく、勉強しないと難しい。しかも、応用が求められる問題があるため市販の問題集では立ち行かないと感じていました。そこで、実務で使用する参考書を購入して、ひたすらネットワークの本を読み問題集を解きながら勉強しましたね」

1級の受験で自分の弱点を知れたという園山さん。最初の受験では「迷った問題」を記憶し、自らのウィークポイントを分析したうえで勉強する分野を絞り、対策を立てていった。仕事をやりながらの勉強のため、学習時間は休日に3時間ほど。参考書やネットでの情報を頼りに、着実に習熟していったという。

 

勉強熱心な園山さんが、パソコン整備士に興味を持った理由は2つある。1つは、クライアントPCに関する特定法人の資格が世の中に少なかったこと、もう1つはあらゆる企業で必要とされる資格だと思ったからだと園山さんは語る。

 

「SE会社に勤務する方なら、サーバー系の資格を取得していると実務と評価に有利です。ただ、クライアントPCの有資格者のほうが、どの部署でも重宝されます。とりわけ、リテラシーがそれほど高くない営業部門などは、部署内に詳しい人がいないと『OSが動かない』『顧客に見せる資料や見積書が作れない』など、困ることが多々あります。

SE会社でも部門によっては、そうしたトラブル時に冷静に対処できる人が求められるし、その人が特定法人の有資格者ならみんなが安心すると思います。それに該当する資格は、私の知る限りパソコン整備士しかないんです」

PCのハードに関する実力を客観的に証明する、パソコン整備士。たとえその場でトラブルが解決しなくても、次の対処がしやすいという点においても、パソコン整備士はどの企業にも生かせると園山さんは感じているようだ。

◆◇◆ 仕事を減らすには「味方を増やす」ことが先決 ◆◇◆

 

 

園山さんは現在、営業スタッフをサポートする営業企画部門で仕事に携わっている。営業活動で必要なデータ収集やマーケティング分析がメインだが、これまでの経歴を買われ営業員が使う端末のトラブル対応も担っている。

「リサーチや分析から営業支援を目的とする部署として立ち上がったのですが、組織が開始された当初は業務の8割以上がトラブル対応。当時の営業部署の雰囲気として『わからなかったら園山に聞け』という感じだったので、コア業務ができないことに悩みましたね」

気配り上手で仕事を依頼しやすい人柄も、園山さんのタスクを増やすことにつながったようだ。とりわけ、新しいシステムが導入されると、トラブル対応が急激に増える。その都度、フォローの仕方にも課題を感じていたと園山さんは思い返す。

「自分ではわかっていることでも、わからない相手にどう伝えるか。どのようにフォローすればよいかと、いつも悩んでいます。新しいツールを導入する際も、会社から提供されるマニュアルがわかっている人に向けた内容なので、現場にそのまま展開しても混乱するだけです。導入することでどんな課題が現場で生じるかを、私のほうで事前想定したうえで展開する必要があります。

まずは私がツールを勉強し、相手のリテラシーや業務内容に沿った手順書を作成して周知させたり、実際に使わせて利用者のリテラシーを高めたりとフォローしていますが、それでもわからない人にはわからないんですよね」

トラブル対応は個々で対応するしかなく、園山さんの業務量はなかなか減らなかった。これが減らなければ、コア業務に専念できない。相談者がどうすれば困らなくなるかを考えながら対処していくなかで、相談者には2つのタイプに分かれることを園山さんは感じ始めた。

「相談者の約8割は『とにかく直ればよい』という考えの人。どうすれば直るかといった途中経過に興味はないので、設定まで自分がガイダンスしながら迅速に流して対応します。でも、残り2割くらいの人は原因や対処法など質問してくる。この人たちへは丁寧にその設定趣旨や意義を説明することで、後々部署内で解決できるチームができるかもしれないと考え教えています。特に若い社員は、教えたことを自分で調べて使い方を編み出す能力に長けています」

トラブル対応要員になり得る相談者を見極めながら対応をしていった結果、園山さんの思惑通りに相談件数は徐々に減っていった。

現在では、非常事態が起こらない限り8割以上の時間をコア業務に専念できるようになったと笑みを浮かべる園山さん。この経験から、トラブル対応は相手のリテラシーを見抜くだけでなく、味方を増やすことが重要だと痛感したそうだ。

「自分の抱える仕事量を、いかに振り分けるかが大切。例えば10人のうち2人が味方だとして、それを3人にするにはどうすればよいか。それを考えることが自分の仕事を減らすのにつながるし、人を育てるうえでも有効な施策だと思います」

 

▲マーケティング分析など、園山さんがコア業務で用いるPC。2020年春からテレワーク勤務となり、出社するのは現在平均週1日程度とのこと。

 

◆◇◆ テレワークができる人、できない人の違い ◆◇◆ 

新型コロナウイルスの影響は、園山さんの業務内容や働き方にも大きな影響を与えた。多くの社員がテレワークへ移行するにともない、リモート環境の整備やツールの使用方法を展開するなど、一時的にトラブル対応が急増したが、「残り2割くらいの人」が着実に成長したと園山さんは語る。

「在宅勤務(リモート業務)が本格的に開始してしばらくの間は、携帯電話には相談の電話が鳴りまくりでしたが、3週間が経過した位から携帯電話での相談は大きく減りました。会議も打ち合わせもオンラインですから、みんなツールの使い方を必死に覚えるんですよ。そんななかで、自分で調べて解決できる社員がチーム内に伝播してくれたのが功を奏しましたね」

コロナ禍になって一年。園山さんもテレワーク勤務がほぼ日常となり、今ではすっかりニューノーマルの働き方が根付いたと感じているようだ。

しかし、世間ではテレワークを導入しても、いつの間にか元に戻ってしまったといった、テレワーク導入の失敗話も聞かれる。園山さんは、テレワークに否定的な経営者の気持ちに理解を示しつつも、企業や組織の業務見直しの必要性について指摘する。

「テレワークには、余計なコミュニケーションが取り除かれ業務に集中しやすいと共に、相手のスケジュールを含めて情報共有をしやすいというメリットがありますが、その一方で、それだけでは上司が部下の行動を把握できないという問題も感じます。テレワーク業務を軌道にのせるには、社員一人ひとりの業務を把握しやすいしくみや取り組みといった『業務の見える化』が必要かもしれません」

ツールを導入しても、現場で使いこなせなければ意味がない。長年トラブル対応に努めてきた園山さんの目には、このように映っているようだ。一方で、業務の見直しだけでなく、一人ひとりのタイプを見極めることも大切だと園山さんは考える。

「与えられた業務を淡々とこなす指示待ちタイプの人は、いざテレワークになって『何をすればよいのか?』と悩む傾向があるようです。逆に、自分が何をしてどんな成果を出せばよいかといった『自分の仕事を理解している人』、いわゆるジョブ型の人ならテレワークに順応しやすいと思います。 これは、プログラミングができる人にも共通しています。これを入力したらこういう結果が出てくるとわかっている。では、この結果を出すには何をやればよいか。そこを考えられる人はプログラミングが上達するし、テレワークでは結果を出せる人材になるでしょう」

目標を立て、そのために何をすればよいかを考えながら行動する。ビジネスでは当たり前のことでも、全員が目標意識の高い人材とは限らない。テレワーク一つをとっても、一人ひとりの個性を尊重し、その人に適した働き方やサポートができる組織づくりも、コロナ禍を生き抜く方法の一つかもしれない。

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鉄道やバイクで旅行するのが趣味という園山さん。ツーリングで夏の北海道を訪れたり、知人と海に出かけたりしながら、仕事の疲れをリフレッシュしているそうだ。

 

 

 

 

 

特定非営利活動法人 パソコン整備士協会