世の中は計算で出来ている
「微分積分とコンピュータ」

突然ですが、「あなたの未来は微分・積分で予測できる(出来ている)」といわれたらどう思いますか?訳が分からない・・・そもそも数学なんて社会に出たらほとんど役に立たないんじゃないの?と思っている方が大多数だと思います。

でもたとえば ↓ これって不思議じゃないですか・・・

今年は今世紀最大の流星群を見るチャンス。

どうやら今夜は今世紀最大に夜空に降り注ぐ流星群を見るチャンスとのこと。空気も澄んできた初冬。その南東の空から流れ星はやってくるらしい。新月で周りは暗く観測には絶好のチャンス。

近くの丘に登って平らな場所を見つけてシートを敷き、あったかいダウンをまとって寝転んでどこを見るわけでもなく、ただ空を見上げていると間もなく視界に尾を引いて輝く星が!消えないうちにお願いを言わないと・・・・そう思っているいるうちに次の流れ星が!!

あれっ?でもなぜ今夜流星群が降り注ぐって分かったのでしょうか。だれがいつ、どんな方法で調べたのでしょうか?不思議ですよね。

私は筋金入りの野球ファン。

今、贔屓の選手がバッターボックスに入りました。一打サヨナラゲームのチャンスです。ピッチャーが投げた渾身のボールのコースを見切り、狙い定めてバットを振り切りました。ボールはバットの中心にミートし、快音と共にぐんぐんと大きな弧を描いて空高く昇っていきます。ボールはついに球場の一番奥にある電光掲示板にぶつかりました。特大ホームランです!サヨナラゲームです!大きな歓声と共に、選手はゆっくりと1塁、2塁、3塁ベースを蹴りホームへ戻ってきます。電光掲示板には推定飛距離170mと表示されています!すごい飛距離ですね。

あれっ?電光掲示板にぶつかって落ちてしまったボールの飛距離が、推定値ではあるけどはっきりと表示されています。だれがいつ、どんな方法で計測したのでしょうか?不思議ですよね。

今日は待ちに待った新型SUV車の納車日。

カーディーラーでいろんな説明を受けいざ出発。最近の車はどれもハイテク!早速カーナビに行ってみたかった少し遠い場所のおしゃれカフェを目的地に設定し、ナビの案内で運転を開始しました。走り出してすぐに目的地への到着予定時間が画面隅に表示されました。到着予定時間は午後2時40分。ゆっくりとお茶の時間にするには丁度いい時間です。順調に走っていた車はやがて渋滞に遭遇しました。到着予定時間も午後2時42分、45分と増えていきます。渋滞が解消すると到着予定時間も早まり、最終的には到着予定は2時43分。ほぼ予定どおりにカフェに到着しました。

あれっ?この到着予定時間。リアルタイムでナビに表示される到着予定時間が早くなったり遅くなったりしています。いったいどうやって計算しているのでしょうか?不思議ですよね。

上記の3つはほんの一例ですが、私達の身の回りにはこうしたことが沢山あります。
そして、この計算はまさに微分積分が使われているのです。

推定飛距離の計算はボールの質量とその物体にかかる重、それから速さと向きが分かれば、ボールが描いていく軌道を微分積分を使った計算で知ることができるのです。車のカーナビも全く同じ考え方です。刻々と変化する自車の速度、そして残距離を複雑に計算し到着予定時間を算出しています。

キーワードは運動方程式だ

ボールも車も、静止しているものも動いているものも、世の中のすべてのものが「運動方程式」という数式に則って動いているのです。この運動方程式は皆さんご存知のニュートンが発見したものです。この運動方程式のことを微分方程式とも言ったりします。

私たちが住む、地球もそして一番最初に例に出した流星群の宇宙だってそうなんです。宇宙を語るには微分積分は欠かせないものなのです。

みなさんご存知のハレー彗星。この軌道もずっと昔、ハレーさんという天文学者がニュートンの運動方程式をもとに、微分積分を使って予測したものです。微分積分を使うことで、この彗星が約75年の周期で地球に接近することが計算(予測)できるなんて不思議なことですよね。

これらの軌道計算や、ボールの飛距離など、微分積分を使えば計算できるのですが、実際にはかなり複雑な処理が必要になります。そのため、かつてはロケットを宇宙へ飛ばそうものなら、それこそ巨大なコンピュータが何十台も必要でした。

それが今、家庭用のコンピュータであっても複雑な計算もあっという間にこなしてしまうほど高性能になりました。実際に、2013年にJAXAによって打ち上げられたイプシロンロケットはパソコン数台で打ち上げを行うことができるほどパソコンの処理能力は向上しています。

微分・積分の正体はなんだ?

 

微分=ものをものすごく小さくして観察すること

積分=小さく分けたものを集めて観察すること

ざっくりですが、ここは数学の解説書ではないので、このくらいの認識でいいかと思います。

ただ、この2つが私達の生活に密接に関係しているということは知っておいていただきたいと思います。微分は変化する瞬間を求めます。天気予報などは微分を使う好例です。積分は面積や体積を求めるために使うのですが、積分を使うものとして、距離の計算、医療器具のCTなどがあります。

こんなもの社会で役に立つのか!と言っていた(?)ものが、実は私たちは微分積分なしにはこの快適な暮らしを続けていくことができないのです。

そして、その計算を担うのがコンピュータなのです。1GHzのは1秒間に10億回もの計算を行うことができます。私たちの暮らしはそれによって支えられているのですね。

微分積分の仕組みをちょっとだけ知ってみよう

ここでクイズです。

今、下記のような計算ができる計算箱があるとします。計算箱にはfという数式が入っています。入力した数字が次に示すような数値になって出力される場合、f  にはどのような数式が入っているでしょうか?

ヒント:数式ですよ。

1を計算箱に入力すると3が出力された

2を計算箱に入力すると5が出力された

3を計算箱に入力すると7が出力された

4を計算箱に入力すると9が出力された

5を計算箱に入力すると11が出力された

さあ答えを考えてみましょう。制限時間は2分です。

 

【答え】 fは入力値を2倍して1を足す数式 「2✕(入力値)+1」が入っています。

どうでしょう?できましたか?

クイズに慣れているかたは簡単に解けたかもしれませんね。

すべての入力値はこのfという数式によって計算されて答えが出力されます。

このように、「入力」と「出力」に何らかの関係があるものを関数と言い、微分ではこの関数がどんな特徴、性質を持っているのかを調べていくのです。

※fはfunction(関数)という意味を持ちます!

さあ、次はこれをグラフ化しますよ。

先ほどの問題の入力値をx軸、出力値をy軸にしたときのグラフを作ってみましょう。下記のようなグラフが描ければ完成です。

グラフ化されることで、より実際の動き(傾きと言います)が視覚的に分かりやすくなりましたね。縦軸と横軸の変化がよくわかり、その瞬間瞬間(例えば、xが0.8のときや1.6のときなど)も見つけられるようになりました。はい!これが微分です!(面積を求めるようになると積分)

このように、微分積分は実際にはとても単純明快なものなのです。

株やってるなら微分は必須です

あなたがもし株やFXを行っているのなら、その株価のグラフは微分によって計算されグラフ化されています。今底値なのか、上がるのか、下がるのか、それを未来予測していくツールが微分です。細かい変化を読みとることで、利益を得ることに繋がります。実は証券マンには数学者(クオンツ※)が多いとも言われています。数学の知識で分析を行っているのですね。

※クオンツとは、Quantitative(数量的、定量的)から派生した言葉で、高度な数学的手法を用いてさまざまな市場を分析したり、さまざまな金融商品や投資戦略を分析したりすること、または、その分析をする人を指します。過去の株価データや企業業績の推移などといった数値化できる情報を用いて分析する「定量分析(quantitative analysis)」を専門に行っている人を「クオンツ・アナリスト」ともいいます。また、分析されたデータに基づいて売買をしたりする運用手法を「クオンツ運用」ともいいます。 ※SMBC日興証券WEBサイトから引用

数学って大事だった(しらない間に使っていた微分積分)

を片手にWEBサイトで近くのレストランを探して、ナビで誘導してもらったり、天気予報を見てレジャーの計画を立てたり、地震に強い家の設計をしたり、コロナ禍の今、体温計で熱を測ったり、ジェットコースターでキャーキャー言ったり、低燃費のエンジンを作ったり、経済の動向を知ったり、これらには微分積分が大活躍しているんです。そうしたことを知って改めて周りを見渡すと、数学もそしてそれらを処理するパソコンやスマホも無下に扱えなくなってくる気がしますね。

最後にもう一つクイズ!

あなたはお昼ご飯を買いに近くのコンビニへ行くために職場を出ました。職場を出るとき時計を見ると12時0分0秒ちょうどでした。12時0分1秒のとき、職場から8m離れた場所にいて、12時0分5秒のときには職場から24m離れたところにいました。

このときあなたはの歩いた速度は?

 

【答え】

速さを求める場合は距離÷時間なので、

距離=24m-8m=16m

時間=5秒ー1秒=4秒

なので、16m÷4秒=4m/秒となりました。

どうやらとてもお腹が空いていてあわてているようですね!

お時間がある方はこれをさっきの要領でグラフ化してみましょう。グラフにより歩く変化がビジュアルで確認できます。この「変化」を「傾き」といいます。微分積分はグラフにするとより理解しやすくなりますよ。

特定非営利活動法人 IT整備士協会